この魔術の行使に関して大きな改訂点が三つある。一つはマジックポイントが0になった時の扱い。一つは魔術を初めて使用する際にキャスティング・ロールが必要になった事。そして選択ルールではあるが、〈クトゥルフ神話〉を使って即興で魔術的効果を作り出すことができるようになったことだ。
ではそれぞれを見ていくこととしよう。
マジック・ポイント魔術を使うために多くの場合マジック・ポイントを消費することになる。今まではマジック・ポイントが0になると意識不明に陥ったが、今回それが無くなった。では不足したらどうなるかといえば、その不足分は耐久力から差し引かれることになる。イメージとしては使い切った精神力を命を削って補う感じか。
耐久力から差し引かれるという事は
その9、
その10で紹介した負傷ルールがそのまま適用されるという事だ。損失の具体的描写はキーパーに任される。
マジック・ポイントはPOWが100までの場合、1時間に1ポイントずつ回復していく(以前は6時間ごとにPOWの4分の1)。この回復は耐久力と同時に行われる。
キャスティング・ロール呪文を唱えるための様々な構成要素については細かく取り上げない。習得法に関しては以前とそれほど変わっていないし、他の点に関してはルールではなくシナリオ、物語として扱うべきものだからだ。
コストを支払い、キャスティング・ロールに成功すれば呪文は発動する。キャスティング・ロールに失敗すれば支払ったコストは浪費されるが何も起こらない。もう一度呪文を試みることもできるが、それはプッシュ・ロールという事になる。このプッシュしたキャスティング・ロールに成功すれば通常のコストで呪文は発動する。失敗した場合、呪文は発動するが大きな代価を支払う必要がある。それは以下の通りだ。
・呪文コストの増加。
通常コスト(マジック・ポイント、POW、正気度)に加えてより多くのコストを支払う必要がある。先も述べた通りマジック・ポイントが不足すれば不足分を耐久力で補わなくてはならない。耐久力でも支払いきれないなら、術者は死ぬことになる。
・その他の副作用
その他の副作用を考慮するために1D8を振る2種類の表が用意されている。これらの多くは術者だけではなく周りの人々にも影響を与えることとなる。
プッシュしないのならば、とりうる方法はもう一度情報源に戻って習得するところからやり直すことだ。それには当然時間がかかるし、習得のためのダイス・ロールもしなければならない。時間の制約があるような状況ならば致命的な事態になりかねない。
キャスティング・ロールというのは呪文が成功したか否かを測るものではなく、その過程の物語を語るために必要なものだ。だから1度発動に成功すればその後はキャスティング・ロールの必要はないし、NPCや怪物(つまりキーパーの管理下にあるもの)にもキャスティング・ロールは必要ない。
〈クトゥルフ神話〉の自然発生的な使用冒頭に述べたように選択ルールとして〈クトゥルフ神話〉を用いて魔術的効果を即興で作ることができる。実行するための原則は通常の技能ロールと変わるところはない。すなわち「何のために、何をするか」だ。
プレイヤーは目的とそのために行う行動を告げ、キーパーはそれを聞いて許容できるかどうか判断し、許容できそうならコストを決めてロールを求める。コストはキーパーの任意だが、同種の呪文があるならそれと同等にするのが良いとされている。以下通常の呪文との差を述べていく。
・プッシュ・ロールプッシュ・ロール失敗のコストと不都合はキャスティング・ロールと同等だ。しかし〈クトゥルフ神話〉の自然発生的な使用の場合、プッシュロール失敗時に効果が発動する保証はない。(つまりキーパーの任意)
・対抗ロールが必要な場合通常ならばPOW対POWの対抗ロールになるが、この〈クトゥルフ神話〉の自然発生的使用の場合は発動する人間の〈クトゥルフ神話〉と対象のPOWでの対抗ロールとなる。
・成功した後呪文の場合は一度成功してしまえば次回からキャスティング・ロールの必要はないが、〈クトゥルフ神話〉の場合は毎回ロールする必要がある。
この運用はかなり慎重を期する必要がある。制限をかけすぎれば自由な発想を奪う事にもなるし、だからといってあまりにも野放図に認めてしまえば分不相応な危険な力を探索者に渡してしまうことになる。
この辺のガイドもルールに記載されているのでよく参照しておいた方が良い。
まとめルールでも指摘されている通り、魔術を使うのは基本的に探索者と敵対するカルティストや魔術師たちである。探索者が魔術を使わなければならないという状況はそれだけ危険と隣り合わせの劇的な場面という事だ。今回の改訂はまさにそんな場面を演出してくれる。
また第12章では魔術のより深みへと足を踏み入れる可能性も示唆している。そして新しい呪文の創造や呪文のさまざまなバリエーションのアドバイスも紹介されている。
これらもまた「ドラマ性の構築」の大きく寄与するものといえよう。
魔術についてもこれでだいたい紹介し終えたはずなので、次回以降は細々としたことをまとめて取り上げていきたい。
追記:
スタートセット発売(2/28)までには終わらせたかったのだが随分と時間がかかってしまった。サボっていたというよりうまく文章がまとまらなかったという理由の方が大きい。あともうひと踏ん張り、多少気合を入れてやっていきたいと思う。