2022年04月06日

第10章「ゲームをプレイする」より「新クトゥルフ神話TRPG」を考えてみる 第4回「不快なテーマ」

始めに
181ページからの「不快な歴史的テーマ」の多くの部分は5版、6版にも記載されている(注)。ここでは1920年代において現代では良識に反する事と言われているようなこと(特に差別問題)が普通の事として受け入れられていた歴史的事実をキーパーがどう扱うべきかを述べている。

現代を舞台とするなら歴史的ではなく、現実の問題として突きつけられるだろう。そして不快にさせるものはそういった事象だけとは限らない。

そういった事をひっくるめて論じるためにタイトルからあえて「歴史的」という文言を外した。

「差別」をどう扱うか
人種差別を特別な要素として組み入れたシナリオとして代表的なのは新クトゥルフ神話TRPGスタートセット収録の「死者のストンプ」だろう。冒頭(スタートセット112ページ)にはキーパーは人種差別を重要なテーマとして描かれる可能性が非常に高いと伝える必要がある事、プレイ・グループが不快にならないレベルを見極めながら提示する力を持つこと、歴史的事実を少し掘り下げる事で有意義なゲームプレイになりうることが述べられている。(注2)

キーパー視点からのものとしてはこれでほぼ全てなのだが、一つだけ指摘しておきたい。キーパーが人種差別を重要なテーマとして扱うと伝えたならば探索者を受け持つプレイヤー側もそのことについて真剣に考えるべきだ。「プレイ・グループ」の中には当然キーパーも含まれる。きちんと考えて欲しいところで茶化すような真似をすればキーパーが不快に感じる(注3)だろう。そして皆が真剣に考えてプレイ・グループとして歴史的事実を掘り下げるからこそ有意義なゲームプレイになりえるのだと思う。

差別以外にも色々な問題についてそれぞれがいろいろな考えを持っている。「ロールプレイング」という手法がそういう相互理解のために使われることもある事を考えれば、TRPGを通して様々な事について真剣に考える場を提供する事もできる。

だがあくまで「ゲーム」であることも忘れてはならない。必要以上に不快な思いをさせてしまえば、それはもはや楽しみ(ゲーム)ではなくなってしまう。

不快な思いを避けるために
「不快な歴史的テーマ」の冒頭に書かれているように自分にとってはアカデミー賞ものの描写だと思っていても、相手方にしてみれば不快なものでしかないというのはままある事だ。このようなすれ違いは多くの場合、意思疎通の不足から生まれる。だからこそ許容できる限界や不快になりうるようなテーマについてプレイの前に議論する事を勧めている。

この議論は相手を打ち負かすためのものではなく、相互理解を深めるためのものだ。そして前回も述べたようにこれはすべてのプレイヤーに責任の一端を受け持ってもらうために必要な手続きでもある。こういった事をプレイが始まる前にしておく事である程度自制が利くようになるだろう。それでも行き過ぎてしまったり、想定外の不快さが発生した時は事前の取り決めをもとにNGを宣言できるようにしておくといいのかもしれない。

まとめ
私はこういう問題に対しては「踏み込みと割り切り」という考え方を持っている。どんどん踏み込んでいく事で物語は確かに深みを増していくが、どこかの点で割り切って戻らないと物語は壊れてしまう。用量用法を守れば味を豊かにしてくれるが、間違えば素材や全体の味を壊してしまうスパイスに似ているともいえるかもしれない。

映画やテレビ、小説やマンガといった創作物なら不快なら途中でやめるという選択肢もあるが、複数の人間が責任を持つTRPGにおいては始まった後に不快さに遭遇してもなかなか離れるという選択肢を取れない。だからこそ事前にどこまで踏み込めるのかのラインの見極めが重要なのだ。D&Dのようなファンタジーですら表現的なものが問題になるのに、ホラーならばなおさらだ。

近年、ゲーム開始前やゲーム中にそういった「踏み込みすぎ」による事故を避けるための「セーフティツール」というのが出回っているそうな。そういったものの使用も検討しつつ、お互いに気持ちの良いゲームプレイをしたいもの。



実は今回もう少し具体的な問題にも踏み込んでいきたがったが、それをやると際限が無くなってしまうので総論的なものにとどまった。次回は「探索者の創造」というところを取り扱っていきたい。


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2022年02月02日

第10章「ゲームをプレイする」より「新クトゥルフ神話TRPG」を考えてみる 第3回「ゲームのトーン」

181ページの「トーンを決める」という項には大きく三つの事が書かれている。一つは事前にどういうゲームにしたいか考える事、もう一つはゲーム中の雰囲気作りについて、そしてホラーだけどやりすぎてしまわないように限界を確認しておこうという事だ。ではそれぞれを見ていこう。

どういうゲームにしたいか考えよう

どういう絵を描きたい、映画を撮りたいのかと言っているのと同じようにキーパーはどういうゲームにしたいのかを選ぶことができる。それは全体のノリを決めると言い換えてもいいかもしれない。その上でこのシステムの本来の様式として「いくらかアクション・シーンを混ぜ込んだホラー」というのを意図していると述べている。

実はこの「いくらかアクション・シーンを混ぜ込んだホラー」という文言に私はかなり救われた気持ちだった。

昔、「クトゥルフの呼び声」でアクション・ホラーを志向しようと考えた時、「それはラヴクラフト的なものといえるのだろうか」と悩んだ時期があった。今回ルールブックの中で「いくらかアクション・シーンを混ぜ込んだホラー」(注)を意図していると知れた事で「自分の考えは間違っていなかったのだ」と考えれられるようになった。

ゲームの雰囲気作り
ゲーム前のものについては「トーンを決める」よりも前段の「ゲームをプレイする準備」に詳しい。そこに書かれたいくつかのアイディアは現実には難しそうなもの(注2)もある。だが「社交的な」時間と「ゲーム」の時間を明確な線を引く心がけ(注3)はできるはず。

そしてゲーム中の雰囲気作りは全体で話し合い、キーパー以外のプレイヤーにも責任の一端を担ってもらうことで初めてプレイ・グループのものとなる。

ホラーの限界を決める
「これはホラーのゲームであり、プレイヤーがおびえる事を楽しんでいると思ってよい」というのが前提(注4)とはいえ、やりすぎれは楽しい時間を過ごすはずが不快なものとなってしまう。

そういった限界をプレイ・グループとしてきちんと見定めておかないと困ったことになる。この辺の詳細は次回の「不快なテーマ」で取り上げていくつもり。

まとめ
「トーン」という言葉が独り歩きし、何か都合のいい言葉として使われているのを耳にすることがある。キーパーが決められるのはせいぜい「どういうゲームにしていきたいか」というところまでだ。ゲームが動き出してしまえばキーパー自身の振る舞いや「自分自身の台本を即興で作り出す自由」を持った他のプレイヤーたちによって物語の雰囲気は変わっていく。

キーパーとして最初の「トーン」を説明することは大事だが、押し付けてしまったら他のプレイヤーは不満だろうし、維持する責任は結局キーパー一人にのしかかってくる。プレイ・グループとしてよい雰囲気の構築と維持に一緒に取り組めるなら結果的にキーパーの負担も減るし、より楽しい時間を過ごすことができるのではなかろうか。

先述の通り次回は「不快なテーマ」。続きを読む

2022年01月10日

第10章「ゲームをプレイする」より「新クトゥルフ神話TRPG」を考えてみる 第2回「キーパーとは」

原則として第10章の順番で進めて行きたいと思うが、話が重複していたり別の場所が重要になることがままあるので例外は多々発生するはず。

ともあれまずはキーパーとは何か、どうあるべきか」というのを記述から読み解いていこう。

キーパーとは何か
この「キーパーとは何か」については第1章に記述がある。キーパーとはゲームを調整し、他のプレイヤーのためにゲームを進行させる役割を背負うプレイヤーの事だ。大事なことはキーパーもまた一人のプレイヤーなのである。だからこそ「プレイヤー全員が楽しめる」という「プレイヤー」にはキーパーも含まれなければならないはずだ。

キーパーの責任と権限
キーパーは他のプレイヤーが持たない責任と強い権限を持っている。それを少し述べていきたい。自らの職責を把握し、それを果たすためにどういう権限を持ち、それをどう使うのか少し考えて欲しい。

物語の準備
自作するにせよ既製の物を使うにせよ、まず使うべき物語を準備する必要がある。その物語の準備と調整はキーパーにしかできない事だ。この準備と調整については後に「トーンとテーマ」、「シナリオ作成」という視点から取り上げていこうと思っている。

物語の進行と調整
物語の進行については第1章(10ページ)の記述が基本となる。より具体的には194ページからの「ゲームのペースを決める」という部分などが参考になるだろう。他にも細かい演出などのアドバイスが第10章には多く記載されている。その辺のアドバイスなども折に触れて紹介していきたい。

ルールの裁定
キーパー最大の権限は卓内におけるルール適用の最終的な決定権者であるという事にある。その権限には責任が伴う事を忘れてはいけない。そのためにゲームとルールをよく理解すること(注)は不可欠であるとも述べている。ルール運用は根幹ともいえる「ダイス・ルール」などの形で取り上げていくだろう。

気をつけて欲しいのはキーパーの責任とはゲーム全体に対する責任ではないという事。それはプレイ・グループ全体の責任であり、自らの職責に基づく以上のものを背負う必要はない。その点ではキーパーも他のプレイヤーたちと何ら変わるところはない。だからこそごくたまに話題となる「キーパーはプレイヤーにとって敵か味方か」という設問はナンセンスだ。最初に述べた通り、キーパーもまた「楽しい時間を過ごす」という目的を持った一人のプレイヤーにすぎないのだから。続きを読む

2022年01月04日

第10章「ゲームをプレイする」より「新クトゥルフ神話TRPG」を考えてみる 第1回「序文」

第10章「ゲームをプレイする」は「Call of Cthulhu」が30年以上培ってきた知見であり、第7版の根幹が詰まったキーパーへの宝箱のようなものだと思う。「新クトゥルフ神話TRPG」として発売されてから2年もたつわけだし、この第10章をたたき台にもう一度見つめ直しても良いのではないかと。

今までやってきたゲーム解説とは違い、読んでいる方が少し厳しいと感じるような事を書くこともあると思う。それはもちろん公式の見解ではないし、押し付けるつもりもない。だが何か感じ入り所があり、理解のための一助となってくれるなら幸いだ。

これからの進め方だが、今までのゲーム解説でも中心として取り上げた「キーパーと探索者を受け持つプレイヤーの立場と権限の明確化」「ドラマ性の構築」といったところは相変わらず中心になっていくだろう。とはいえ基本的にはキーパー目線からの話が主体になっていくはず。

というわけでしばしの間お付き合いくださいませ。


2022年01月01日

2022新年あいさつ分室編

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


これから「新クトゥルフ神話TRPG」を叩き台にした少し大きめの企画を考えています。今プレイしているPCゲーム「UBOAT」の紹介記事もやろうかなと考えています。

まあどこまで実現できるか。
posted by uzi at 11:13| Comment(0) | ご挨拶 | 更新情報をチェックする

2021年01月01日

2021新年あいさつ分室編

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

「新クトゥルフ神話TRPG」の解説で一応の成果は出せたと思いますが、それ以降の話題が続かなかったのは少し残念だったかな。

「トレイル・オブ・クトゥルー」は購入するかどうかから正直思案中。

そうなるとここでする話題ってそんなにないのかな。もし「新クトゥルフ神話TRPG」やPCゲーム方面で何か大きな動きがあるならこっちで取り上げたい。
posted by uzi at 10:22| Comment(0) | ご挨拶 | 更新情報をチェックする

2020年03月28日

新クトゥルフ神話TRPG ゲーム解説その30「ほんとにどうでもいい事を語る その2」

さてどんどん続けていこうか。


語族
技能の選択ルールとして一つの専門分野を究めると関連した専門分野に転換できるというものがある。(ルール的には技能値がボーナス的に上昇する)

このうち〈他の言語〉に関してはその語族に属する〈言語〉が関連した専門分野になるそうな。例がいくつか載っているが、このルールを使いたいキーパーは百科事典で「語族」の事を調べる事を勧められている。

つまり真に楽しみたいならそういうことをちょっと勉強した方がいいよって事だ。
(例には載っていなかったがラテン語が出てくる頻度が多いのでラテン語族に属する言語がどれかというのが結構重要だと思う。確かフランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語あたりだと思った。結構あやふやなのでツッコミがあればどうぞ)



映画の話
第1章でキーパーの役割が監督に、探索者を演じるプレイヤーは俳優に少し似ていると述べたり、第10章ではジョン・カーペンターの「遊星からの物体X」(注1)をもとにどうシナリオを構成していくかを囲みとしてとして取り上げるなどといった具合に、表現手法やシチュエーションの例え話に映画を持ち出すことが多くなった。ジャンルは決してホラーに限定されているわけではない。

これは昔から映画を参考にすることでTRPGのプレイ(キーパーだろうが探索者だろうが)の幅を大きく広げることができると言われていたことを追認したともいえる。

それにしても
映画「地獄の黙示録」でデニス・ホッパーの演じたフォトジャーナリスト
って例えで「あぁ、あれね」と即座にイメージできる人ってどのくらいいるんだろう?


魔術とは何か?
第9章の序文にある、
魔術は人類の理解する能力の外側にある異界の知性に由来
科学の頂点に位置するような事柄は、無知なるものから見ればすぐ「魔法」にされてしまいかねない


アイザック・アシモフは「ファウンデーション」で退化した人々に高度な科学技術を「神の力」として浸透させることで支配権を強め、後に「魔法使い」と呼ばれるようになる様を描いた。アーサー・C・クラークは「十分に発達した科学は魔術と区別がつかない」という有名な言葉を遺した。逆にH・P・ラヴクラフトだって100年前はホットな最先端科学であった「南極探検」、「相対性理論」なんかを作中で取り上げている。冒頭で引用した文章ははこの辺りを意識して書かれたものなのだろう。

つまりクトゥルフ神話にとっての魔術とは人類が理解しえない科学であるといえる。そういった「科学」を目の当たりにすることで狂気へと近づいていくのだ。

この話はクトゥルフ神話を扱うならSFにカテゴライズされるような作品も向いているのじゃないかという私の考えを補強してくれた。(注2)





今回は少し硬めの話になっちゃったな。多分次が最後になると思う。続きを読む

2020年03月21日

新クトゥルフ神話TRPG ゲーム解説その29「ほんとにどうでもいい事を語る その1」

タイトル通り最後は本当にどうでもいい事を語るので、少しの間お付き合いください。

キーパー・オブ・アーケイン・ロア
5版、6版の「隠された知識をキープしている者というところから、キーパーと呼ばれる」という説明的な表現から、最初のように「隠された知識を守る者」(ちなみに最初の日本語版では「隠された知識の守護者」という厨二病的訳語だった)にキーパー・オブ・アーケイン・ロアとルビを振る形になった。

これは原文からなのか訳者のセンスなのかはわからないけど、私にとってこの名称の復活は本当に喜ばしい。

私はキーパーの事を「KP」と略すことに非常な抵抗がある。もともと略しているものをさらに中途半端に略しているからだ。例えるなら「ゲーム・マスター」は「マスター」だから「MA」とか「MS」と略していると言っているようなものだ。

だからキーパーをさらに略すならもう「K」とまで略すか、「Keeper of Arcane Lore」の頭文字を取って「KAL」なんてのはどうだろう。(絶対定着しないな)

ともあれ「キーパー・オブ・アーケイン・ロア」という正式名称がどんどん広まっていってくれればと思う。そこで「キーパーが何故キーパーなのか」という事に少し考えをめぐらせてくれればと切に願う。

一人の探索者の死
地球を隷従させようというクトゥルフの根本的な計画を阻止できるならば、1人の探索者の死は小さなことだ!
これは第5版の
クトゥルフはそんな小さなことには気にとめませんから、君も気にとめないでください。
に匹敵する名言だと思う。ここで「一人の探索者の死」という事をもう少し深く考えてみたい。

冒頭の文章はおそらくキーパーにも探索者を受け持つプレイヤーにも向けられていると思う。

探索者を受け持つプレイヤーには自身の探索者の死を恐れるなと、キーパーには探索者の死はあくまで「地球を隷従させようとする者たちの根本的な計画」を阻止するための礎(少なくともそう信じられるもの)であるべきだと。

そう考えればキーパーもむやみやたらに殺そうとするべきではないことが理解できるだろう。探索者を受け持つプレイヤーたちも命の懸けどころで躊躇せずに行動すれば、武運つたなく死を迎えたとしてもその探索者は真に生きていたと言えるのではないだろうか。

逆に自身の探索者を失う事を恐れるがあまり、命の懸けどころで正しく命を懸けられなかった者は、たとえ生き延びても物語の中では死んでいるのも同じなのではなかろうか。

探索者の死に関しても第10章で重要なアドバイスをしているので参照してほしい。

ハーヴェイ・ウォルターズ
今回も探索者創造の実例となったハーヴェイ(第6版のみハーベイ)・ウォルターズ氏。今まで以上にルールブックのあちこちで体を張って実例を示してくれています。

第5版でかなり詳しい設定がなされていたが、今回その辺の設定はバックストーリーの影響で変わっている。第7版になって〈信用〉に多めにポイントを回しているのはその2で紹介した通りだ。

何よりも一番の差異は肖像だ。第2版、第5版、第7版の三種類(第6版に肖像画はない)を見比べたら、「誰だ、お前?」になること受け合い。




少し長くなりそうなのでここでいったん切ります。
3/21:誤字を修正しました続きを読む

2020年03月20日

新クトゥルフ神話TRPG ゲーム解説その28「〈アイデア〉、そして怪物たち」

さて、少し残したことをちょぼちょぼやっていこう。

〈アイデア〉ロール
・キーパーが重要な手掛かりを提示し損ねて動きが取れなくなってしまった。
・キーパーとしては情報もしっかり提示して気が付いてほしい事なのに、探索者側が全く気付かずに迷走を始める。
・確かに手掛かりは提示したが、(実時間で)長い時間がたっていてプレイヤー側が失念してやるべきことを見失ってしまった。


等々、こんな感じでゲームが止まってしまうことはないだろうか?そんな状況を動かすためにプレイヤーにINTロールをさせる事をルール的に〈アイデア〉ロールと定義した。

これは通常、探索者側から提案されるものだとルールにはある。しかし迷走を見かねて探索を本筋に戻すためにキーパー側から提案するという事態もありそうだ。かなりメタ的なロールではあるが、昔からキーパーの裁量レベルで行っていたものをルールとして追認したのだろう。その明確な基準を提示したのではないか。

何にせよキーパーは難易度を設定して、探索者側の代表(INTが一番高い者がやるのが普通だろう)が〈アイデア〉ロールを行う。設定される難易度は手掛かりをキーパーがきちんと提示していたかで決めることとなるだろう。ここはキーパーの公平性が問われるところだ。

〈アイデア〉ロールが成功しようが失敗しようが、状況を動かすための手掛かりは与えられる。ロールの結果はそこに至る過程を決める。成功すれば手掛かりはすんなりと手に入るし、失敗すれば時間を浪費するなど何らかの代償が必要とされるだろう。

一応は能力値ロールなのだから、プッシュや〈幸運〉を消費することはできるだろうが、成功しても失敗しても得られるものが変わらない以上は大した意味があるとは思えない。

キーパーとして大事なのはこのような〈アイデア〉ロールに頼らなければならないような事態をなるべく作らないようにすることだ。そのために第10章で手掛かりについて重要なアドバイスを行っている。そして〈アイデア〉ロールの結果を「アイデア」を渡す物語として組み込んで行くべきだとしている。

神話種族の分類
いままで神話種族といわれるものを
・奉仕種族(上級、下級)
・独立種族(上級、下級)

神格として、
・グレート・オールド・ワン
・外なる神
・旧き神
こんな感じで分類してきた。今回この分類がオプション扱いになり、正規としては分類を神格かそうでないかだけにまとめた。もちろんこれでゲームとして何がどう変わるというわけではないのだが、これもまた長い間守り続けていたものなので大きな改革といえるのではないだろうか。




これでだいたい探索者の創造とチェイスを除いて重要なことは網羅できたかな。もし何かあれば思い出したようにやるかもしれないけど、残りはほんとにどうでもいい事を語るだけになるはず。

2020年03月12日

新クトゥルフ神話TRPG ゲーム解説その27「魔術の行使」

この魔術の行使に関して大きな改訂点が三つある。一つはマジックポイントが0になった時の扱い。一つは魔術を初めて使用する際にキャスティング・ロールが必要になった事。そして選択ルールではあるが、〈クトゥルフ神話〉を使って即興で魔術的効果を作り出すことができるようになったことだ。

ではそれぞれを見ていくこととしよう。


マジック・ポイント
魔術を使うために多くの場合マジック・ポイントを消費することになる。今まではマジック・ポイントが0になると意識不明に陥ったが、今回それが無くなった。では不足したらどうなるかといえば、その不足分は耐久力から差し引かれることになる。イメージとしては使い切った精神力を命を削って補う感じか。

耐久力から差し引かれるという事はその9その10で紹介した負傷ルールがそのまま適用されるという事だ。損失の具体的描写はキーパーに任される。

マジック・ポイントはPOWが100までの場合、1時間に1ポイントずつ回復していく(以前は6時間ごとにPOWの4分の1)。この回復は耐久力と同時に行われる。

キャスティング・ロール
呪文を唱えるための様々な構成要素については細かく取り上げない。習得法に関しては以前とそれほど変わっていないし、他の点に関してはルールではなくシナリオ、物語として扱うべきものだからだ。

コストを支払い、キャスティング・ロールに成功すれば呪文は発動する。キャスティング・ロールに失敗すれば支払ったコストは浪費されるが何も起こらない。もう一度呪文を試みることもできるが、それはプッシュ・ロールという事になる。このプッシュしたキャスティング・ロールに成功すれば通常のコストで呪文は発動する。失敗した場合、呪文は発動するが大きな代価を支払う必要がある。それは以下の通りだ。

・呪文コストの増加。
通常コスト(マジック・ポイント、POW、正気度)に加えてより多くのコストを支払う必要がある。先も述べた通りマジック・ポイントが不足すれば不足分を耐久力で補わなくてはならない。耐久力でも支払いきれないなら、術者は死ぬことになる。

・その他の副作用
その他の副作用を考慮するために1D8を振る2種類の表が用意されている。これらの多くは術者だけではなく周りの人々にも影響を与えることとなる。

プッシュしないのならば、とりうる方法はもう一度情報源に戻って習得するところからやり直すことだ。それには当然時間がかかるし、習得のためのダイス・ロールもしなければならない。時間の制約があるような状況ならば致命的な事態になりかねない。

キャスティング・ロールというのは呪文が成功したか否かを測るものではなく、その過程の物語を語るために必要なものだ。だから1度発動に成功すればその後はキャスティング・ロールの必要はないし、NPCや怪物(つまりキーパーの管理下にあるもの)にもキャスティング・ロールは必要ない。

〈クトゥルフ神話〉の自然発生的な使用
冒頭に述べたように選択ルールとして〈クトゥルフ神話〉を用いて魔術的効果を即興で作ることができる。実行するための原則は通常の技能ロールと変わるところはない。すなわち「何のために、何をするか」だ。

プレイヤーは目的とそのために行う行動を告げ、キーパーはそれを聞いて許容できるかどうか判断し、許容できそうならコストを決めてロールを求める。コストはキーパーの任意だが、同種の呪文があるならそれと同等にするのが良いとされている。以下通常の呪文との差を述べていく。

・プッシュ・ロール
プッシュ・ロール失敗のコストと不都合はキャスティング・ロールと同等だ。しかし〈クトゥルフ神話〉の自然発生的な使用の場合、プッシュロール失敗時に効果が発動する保証はない。(つまりキーパーの任意)

・対抗ロールが必要な場合
通常ならばPOW対POWの対抗ロールになるが、この〈クトゥルフ神話〉の自然発生的使用の場合は発動する人間の〈クトゥルフ神話〉と対象のPOWでの対抗ロールとなる。

・成功した後
呪文の場合は一度成功してしまえば次回からキャスティング・ロールの必要はないが、〈クトゥルフ神話〉の場合は毎回ロールする必要がある。




この運用はかなり慎重を期する必要がある。制限をかけすぎれば自由な発想を奪う事にもなるし、だからといってあまりにも野放図に認めてしまえば分不相応な危険な力を探索者に渡してしまうことになる。

この辺のガイドもルールに記載されているのでよく参照しておいた方が良い。



まとめ
ルールでも指摘されている通り、魔術を使うのは基本的に探索者と敵対するカルティストや魔術師たちである。探索者が魔術を使わなければならないという状況はそれだけ危険と隣り合わせの劇的な場面という事だ。今回の改訂はまさにそんな場面を演出してくれる。

また第12章では魔術のより深みへと足を踏み入れる可能性も示唆している。そして新しい呪文の創造や呪文のさまざまなバリエーションのアドバイスも紹介されている。

これらもまた「ドラマ性の構築」の大きく寄与するものといえよう。


魔術についてもこれでだいたい紹介し終えたはずなので、次回以降は細々としたことをまとめて取り上げていきたい。





追記:
スタートセット発売(2/28)までには終わらせたかったのだが随分と時間がかかってしまった。サボっていたというよりうまく文章がまとまらなかったという理由の方が大きい。あともうひと踏ん張り、多少気合を入れてやっていきたいと思う。